薬の肝臓代謝、腎臓代謝って何??

代謝とは

水溶性の薬(水に溶けやすい薬)はそのままの形で主に尿中に排泄されます。一方、脂溶性の薬(水に溶けにくい薬)は主に肝臓で代謝(酵素の働きによって薬の構造が変化して水溶性となる)という過程を受けた後に尿中や糞中に排泄されることになります。従って、肝臓や腎臓の状態によっては薬の効果に影響が出る場合があります

経口投与された薬剤は,小腸内腔から小腸粘膜を経て血液中に吸収され,門脈を通じて肝臓へと運ばれ,肝静脈を経て全身循環に入ります〈図1〉。薬物代謝酵素は小腸と肝臓に特に多く発現しており,そのために薬は全身循環に入る前にまずここで代謝を受け,これを初回通過効果(first pass effect)と呼びます。薬などの異物にとって,初回通過効果は体内に入る前の重要な関所となっています。関所を越えて全身循環に入った後は,多くの薬物は肝臓および腎臓で代謝・排泄を受けることで徐々に消失します。

脂溶性薬物は肝で代謝されることにより血中から消失する。
水溶性薬物は腎から排泄されることにより血中から消失する。

肝排泄型・腎排泄型×

肝代謝型薬物・腎排泄型薬物〇

水溶性の成分のバイオアベイラビリティ:bioavailability:生物学的利用能は、循環血流に乗るまでに通過しなければならない3つの関門を無事に通過できるかどうかで決まる。第一の関門は、腸管系(消化・吸収系)に到達した成分が腸壁の上皮細胞膜を通過できるかどうかである。第二の関門は、膜を通過して上皮細胞に取り込まれた成分がそのまま無事に門脈の血流中に移行できるかどうかである。腸壁の上皮細胞に取り込まれた成分のすべてが門脈血に移行できるわけではない。小腸上皮細胞の管腔側の膜には、特定の成分(異物)を汲み出す機能をもつトランスポーター、すなわちp-糖たんぱく質(Pgp)が存在しており、Pgpが機能して成分が管腔側へ戻される場合もある。たとえば、いくつかの抗がん剤などがPgpによって汲み出されることが知られている。さらに、小腸上皮細胞にはシトクロムP450(CYPs)などの代謝酵素(表1)も存在しており、これらの代謝酵素によって代謝されずに残ったものだけが無事に門脈血に移行できる。第三の関門は、肝臓に存在する代謝酵素(表1)である。門脈血に移行して肝臓に到達し、さらに肝臓での代謝も免れたものだけが循環血流に乗って体内に分布することができるのである(図3参照)。
 吸収された成分が循環血流に乗るまでの間に代謝酵素などの作用を受けてその量を減らすことを薬学分野では「初回通過効果」という。薬の場合、多くのものは初回通過効果によって不活性化されるが、不活性体が活性体になる例(アスピリン→サリチル酸、ヘロイン→モルヒネ、レボドパ→ドーパミンなど)もあり、「プロドラッグ」と呼ばれている。
 初回通過効果は、水溶性のフィトケミカル(phytochemical、ファイトケミカルともいう)のバイオアベイラビリティにも大きな影響を与えるものと考えられる。なお、当然のことながら、初回通過効果で受ける影響は物質によって異なり、90%以上が代謝されてしまう物質もあれば、ほとんど影響を受けない物質もある。
 他方、脂溶性成分のバイオアベイラビリティはどうか。脂溶性の成分は、血液系ではなくリンパ系に吸収され、胸管を経て鎖骨下静脈から循環血流に乗る(図2)。吸収から循環血流に乗るまでの間に関門といえるものがほとんどない。すなわち、脂溶性の成分は、「初回通過効果」を受けることなく循環血流に乗るのである。なお、脂溶性成分でも食物繊維など共存成分の影響、あるいは調理の影響などによって腸管における吸収阻害を受ける可能性はある。したがって、摂取した脂溶性成分の全てが循環血流に到達するとは考えられないが、腸管で吸収できたものはほぼ100%が循環血流に乗るものと想定される。

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