
サック
末梢性DVTと中枢性DVTでは治療内容が変わってくるため、細かく説明していきます
DVTは末梢性か中枢性か確認
まずはじめにDVT(深部静脈血栓症)とは、血栓ができ、深部静脈の内腔を塞いでしまった状態です。
血栓のある部位により末梢性(遠位型)、中枢性(近位型)があり、治療方法が変わってきます。
末梢性・中枢性とは
血栓症の部位によって膝窩静脈から中枢側の静脈の中枢型(近位型)と、膝窩静脈より下の末梢側の末梢型(遠位型,下腿型)に分類されます。

末梢型DVTの治療
- リスクの少ない末梢型DVTには抗凝固療法を施行せず,7~14日後の超音波検査での経過観察を行い,中枢伸展例のみあるいは、高リスク群のみに抗凝固療法を施行する方法が推奨されている
- 末梢型DVTには①抗凝固療法を行わずに7~14日後に超音波で中枢伸展の経過観察を施行する,②高リスク症例には抗凝固療法を施行するという2つのアプローチが行われている 。
- VTE 既往例,担癌患者,下肢整形外科手術患者など VTEリスクの高い術前症例では伸展リスクや出血リスクを慎重に検討し管理法を決定する
中枢型DVTの治療
中枢型のDVTには抗凝固療法を行う
注射薬
ヘパリン
- ヘパリンNa注射液
- 未分画ヘパリン
- 適応症:DIC、体外循環の血液凝固防止(透析)、血栓症の予防・治療
クレキサン
- 低分子ヘパリン
- クレキサン皮下注キット
- 適応症:下記の下肢整形外科手術施行患者における静脈血栓塞栓症の発症抑制(股関節全置換術 、膝関節全置換術、股関節骨折手術)
アリクストラ
- 合成Xa阻害薬
- アリクストラ皮下注
経口薬
ワーファリン
- ビタミンK拮抗薬
リクシアナ:エドキサバン
- 直接Xa因子阻害薬
- DOAC(直接経口抗凝固薬)
イグザレルト:リバーロキサバン
- 直接Xa因子阻害薬
- DOAC(直接経口抗凝固薬)
エリキュース:アピキサバン
- 直接Xa因子阻害薬
- DOAC(直接経口抗凝固薬)
安静度はどうなるの?
日本には明確な離床基準はない
- 血栓を遊離させてPTEが生じるという危惧があり、にベッド上安静が行われてきた。
- 現在では、抗凝固療法を施行していれば,ベッド上安静でなく早期に歩行を行っても,あらたなPTE発症は増加せず,DVTの血栓伸展は減少し,疼痛も改善したという報告がある
- 下肢疼痛が強くない,巨大な浮遊血栓を伴わない,一般状態が良好などの条件がそろえば,患者をベッド上安静にせず早期歩行させることにより,DVTの悪化防止と患者のQOLの向上が期待できる.巨大な浮遊血栓症例では症例ごとの判断を要する
アメリカの離床アルゴリズム
2016年に静脈血栓塞栓症(VTE)における臨床実践ガイドラインがアメリカ理学療法協会(APTA)から発表され、離床のアルゴリズムが示された。
- 下大静脈フィルターの有無を確認し、フィルターが挿入されている場合は離床可能。
- フィルターが挿入されていない場合は、抗凝固療法の種類により離床のタイミングを判断。
- 抗凝固療法は、①低分子量ヘパリン、②未分画ヘパリン、③ワーファリン、④フォンダパリヌクス・NOAC新規経口抗凝固剤が挙げられている
- 離床基準としてそれぞれ、①投薬5時間後~、②投薬48時間後~、③INR 2~5、④投薬3時間後~と示されている
- 長期臥床の必要性が無いことが示されている。
DVT発症後の離床基準にいては、日本では明確な基準が確立されていないのが現状。施設や医師、DVTの大きさや発症部位によっても違いがあり、施設の基準や医師への確認が必要である。